漫画のために早退したい

読んだ漫画のてきとう過ぎる備忘録ネタバレ前提。他。

2017/05/05 Love,Hate,Love/ヤマシタトモコ

 

Love,Hate,Love. (Feelコミックス)

Love,Hate,Love. (Feelコミックス)

 

 


貴和子は、ある日同じマンションの隣室ベランダでタバコを吸う男に出会う。
52歳、気だるげな大学教授、縫原。
バレエダンサーの道を諦め、バレエ講師として日々を過ごす貴和子に、彼は誠実な言葉で語りかける。
今まで恋愛を避けてきた貴和子の心に火がともり…BL界の人気作家が描く、28歳・処女の真摯でピュアなラブストーリー!
作家・三浦しをん推薦。
描き下ろし後日談も収録♪


 基本的に新しく読んだ漫画の感想を書いているのだが、
こちらは久々の再読。
何度読み返してもかなり好きな漫画なので記事にしておく。



あらすじの
「BL界の人気作家が描く、28歳・処女の真摯でピュアなラブストーリー!」
キラキラしていて突っ込みところ満載のいいコピーである。

思えば、「天 天和通りの快男児」のキャラクター・赤木しげる(42~53歳)で
「おっさんの魅力」に目覚めた私だが、
大体赤木しげるやその他、
普通に単品で出てくるおっさんキャラに萌えていただけだった。

 

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クク…(ざわ…ざわ…)
※この画像検索してる時に赤木の葬式シーンが目に入ってウウッてなった。

だがこの「Love,Hate,Love」は、52歳大学教授と28歳バレエ講師の恋愛。
つまり単体キャラじゃない、年の差二人の物語!

少女漫画には普段そんなにキュンキュンしない私だが、いやあいい。
なんでこんなにキュンキュンするんだろう。いい、いいよ。


最近でこそ年の差漫画はわりとあるが、発売当時2009年。
まだそんなに年の差がフューチャーされていなかった気がする。
どうなのだろう。
私の読んでいる中になかった、というだけかもしれないけど。

その中でいち早く私に「おっさんの魅力」を魅せてくれたヤマシタトモコ
本当に、もう責任を取ってくれ!と言うくらい
この人の描く「おっさん」というのは魅力的なのである。

本作でも、
ヒロインを助ける52歳、
かと思えば狼狽し出す52歳、
余裕な52歳、
かと思えば怖気づく52歳、
全然手を出してこない52歳…

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このシーンよすぎて、血がワッ…となりました。

ヤマシタトモコ自身も、確かおっさん萌えがあったと思う(何かで読んだ)
じゃないとこんな萌えるおっさんばかり描けないもの…。

とにかくおっさんがツボなのだ。
逆に、おっさんが地雷な人は主人公、貴和子の友人のように
”理解できない”となるだろう。

男性嫌悪の気がある貴和子は
自分の感じる”怖くない”男性、縫原に惹かれていく。

28歳の貴和子はいい。
初めてまともに好きになった男性、自らの若さ、美しさ。
それで突っ走ることが出来る。

しかし52歳の縫原はそうも行かない。
こんな若いお嬢さんのいい時期を、自分がもらってしてしまっていいのか。
貴和子に惹かれながらも揺れ、狼狽し、怖気づく。

このあたりの心理描写が繊細でいい。
そこにヤマシタトモコの詩的な表現が絡み合って、
なんとも言えない空気感が漂っている。


あの人の
「ぼく」とか 「あなた」とか
ゆっくり喋る声がスキ

案外 不遠慮な眼差しがスキ
力の抜けた立ち方がスキ
顔がスキ

とにかくもう


うーん。私はこのモノローグがスキ。

これはもう読んでいただかないと伝わらないのだが、
映画のようなポエムのような、その独特の間に魅せられる。

そのテンポと、深すぎない心理描写が
「お洒落ぶってる」「雰囲気漫画」「感情移入できない」などと酷評されることもあるヤマシタ作品だが、
私はそこが彼女の魅力だと思っている。

かつて幻想文学の先駆者泉鏡花
「ストーリーのバリエーションのなさ」を批判されながらも
その誰にも真似出来ない美しい文章から「言葉の魔術師」と呼ばれたように
作家それぞれに特化したものがあっていいと思うのである。

全員が及第点でも面白くない。
雰囲気ばかりが上手い作家、心理描写がえぐい作家、作画が最高な作家、
色々いていいんじゃないかと思う。

さて。
本作はただの恋愛話で終わらず、
貴和子のバレエへの思い、別れ、愛が描かれているのも面白い。

ダンスを生業とする人はこういう心情で生きているのかなと、
興味深く想像することが出来る。
ダンスシーンが多いのも楽しい。
貴和子のポーズやフォームが美しく、目を奪われる。


バレエは私を愛してくれなかった


と、涙を零す貴和子もとても綺麗。

ヤマシタトモコは「BUTTER!!!」という高校生社交ダンス漫画も描いているが
こちらも大好き。
そういえばこちらにもくたびれたおっさん(ダンス部顧問)が出てきて、
そのおっさんもかなり萌える。オススメです。

 

 
あと余談だが、
表紙で貴和子のつけているパンジーのピアスのようなものが好きだ。
だからこの表紙はかなり好き。

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↑これ。

後書きを読むと、
ヤマシタトモコの周囲には縫原は概ね好評だったようである。


三浦さん(※帯にコメントを寄せた三浦しをん氏)
「現実に若い女と付き合う男は精神的に未熟な男」
というお言葉に目からウロコがぼろぼろ落ちたのであった。
「でも二次元だと萌え」という共通の見解に落ち着いてしまいましたが。

 

おお…なるほど…。
現実の年の差に関しては分からないが、
2次元だと激萌えというのには心から賛同。

これからも、折に触れ読み返しては悶えるんだろうなあ。

おっさんの素晴らしさを私たちに教えたもうてしまったヤマシタトモコ
これからも様々なおっさんを供給していただきたい。
よろしくお願い致します。


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