漫画のために早退したい

読んだ漫画のてきとう過ぎる備忘録ネタバレ前提。他。

2017/05/15 亜獣譚9〜12話/江野スミ

 

www.urasunday.com

少し前は裏サンデーで読めた気もするが、
単行本発売に伴ってか今は読めない。
試し読みしたい方はアプリ「マンガワン」をDLしていただきたい。
(こちらもいつまで無料で読めるかは分からないが)

前回の記事はこちら。

m-nszn.hateblo.jp

 
アプリで読んでおいてなんだが、単行本は5月12日に発売!第一巻!買います!

亜獣譚 1 (裏少年サンデーコミックス)

亜獣譚 1 (裏少年サンデーコミックス)

 

 

ちなみに作者のTwitterによると、用意された画像を使うことで
漢和辞典としてカモフラージュ出来るそうです。

 

 
ブックカバーのテンプレは以下。

www.pixiv.net


こういう遊び心だよなぁ〜〜!!!
むしろ漢和辞典にカモフラするためにもこの本を手に入れたい。
大好き!江野スミ!!

 

さて。
9話から12話。たった4話なのだが、かなり展開が早い。
しかしリズムよく、見せ場も盛り上がりもきちんとしているので
「展開が早すぎ」「物足りない」というような印象がほとんどない。
こういうところに作家としての江野スミの力を感じる。

少年、ホシ・チルは仲のいい害獣と相談し、
極悪下劣で最低な教官・ハラセを殺す算段を立てる。
が、害獣の本能を逆手に取られ、あえなく失敗。

その、醜い瞳からポロポロ涙を流して謝る害獣。


ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
僕のせいでチルをひどい目にあわせてしまった…

 

血走った大きな一つ目。
見た目は人間より醜いはずなのに、
友のために涙を流す瞳は、
下劣な人間・ハラセのそれよりずっとずっと綺麗だ。


ごめんなさい
自分の中の人間の部分が眠くなってきた


理性を失った害獣(元人間)は、
致命傷を追い立ち上がれないチルを食べるしか選択肢がなくなる。

それを告げるひとコマは丁寧に描きこまれていて、
「友が友を食べねばならない」恐ろしさに背筋がゾッとし、また心底悲しい。

それに対するチルの台詞も、
そしてこの後の展開も本当にやり切れない。


ヴィエドゴニャ(害獣病の保菌者。死ぬと害獣化するため忌避されている)というだけで
そして忌み嫌われる害獣を愛しているというだけで
ここまで平穏とは程遠い日々があるのだ。
それは「普通」でないホシ・チルを容赦なく殺す。


コミックスに収録されるかはわからないが、
9話の最後に“ちょい足し”というおまけ漫画がつく。
「私を殺せる悪魔」というタイトルで、
チルの胸のうちが綴られる。

 


あなたが私に好きなものを好くなという事で
私の人生にイバラが茂る。

あなたは私を悪魔だといって
私を刃物で切り裂くが
私は一度として
あなたに刃物を向けたことはない。

 

チルは害獣を愛している。
しかし、その「普通」とかけ離れた思想は悪魔と呼ばれ
糾弾され、脅かされ、大切なものはいつも奪われる。

 


分かったことがひとつある。
確かに思想とは恐ろしい悪魔だった。

ただし、あなたがたの「普通」という思想だけが
私を殺せる悪魔だった。


「普通」という思想だけが、
「普通」からはみ出たものを容赦なく殺す悪魔であった。

この漫画は異世界が舞台だが、そこにある思想は、現代日本に通じている。

本当に単なる予想だが、
これは作者・江野スミが生きてきた中で、
その肌で感じてきたことなのではないだろうか。

ここまで思慮深く感性豊かな江野スミが、
現代日本で何の苦労もなく暮らしてきたとは考えにくい。
江野の作品、ツイートくらいにしか触れたことがないが、
それだけでも彼女が「普通」から遠い、とても魅力的な場所にいることは想像がつく。

多数の人間が思考停止して崇める「普通」という思想が、
一体どれだけの「普通でない」人間を殺しているのだろうか?
そんな問いかけが聞こえてくるようだ。

また、江野スミのすごいところは、
このように深い思索を漫画に入れ込み表現してくるところにもあると思う。
読めば読むほど、その深い心の内を知ることが出来る。
またそれを伝えてくる表現が非常に文学的で美しい。
画力のある絵柄に、的確で鋭い切り口の文章が添えられ、あっという間に心を奪われる。

こういう重厚な表現が出来る、そして様になる作家は貴重だと思う。


物語は、
主人公、アキミアと少年、ホシ・チルの邂逅へと進む。
ホシ・チルの姉がホシ・ソウ。
アキミアはホシ・ソウと結婚の約束を交わしている。


過去に死なせてしまった女性をソウに重ね、
「死んだ彼女に殺されたい」という気持ちを膨らませるアキミア。
ソウの愛し方は死んだ彼女と同じ、
だからソウの魂は彼女だ、
ソウの魂を幸せにすることが、死んだ彼女への贖罪なのだ、
と、勃起しながら満面の笑みで語るアキミア。


アキミア、イッちゃってんなー!


もはやこのシーンがシリアスなのかギャグなのかも分からない。笑
真面目な話のようで狂っているし、
勃起はしてるし。

このバランスが絶妙だなあ。
アキミアの異常性を訴えつつ、
読者に「ちょっと待てちょっと待て。笑」と突っ込ませる。

シリアスばかりでも胃もたれする。
超変態な主人公、というカードを使って、
読者に親近感も持たせる。

ある意味「普通」から逸脱しているアキミア。
しかし周りの目を欺き、上手く生きている。
その点で、チルとは対極にいる男である。

その後、
色々が露見してとっ捕まったチル、
ようやく大切な弟、チルのそばに行けたソウ、
変態アキミア。

これからどうなるのか楽しみだ。
コミックスにこの続き載ってるのかな?
もっかい貼っとこ。

亜獣譚 1 (裏少年サンデーコミックス)

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