漫画のために早退したい

読んだ漫画のてきとう過ぎる備忘録ネタバレ前提。他。

2017/03/27 春の呪い①②/小西明日翔

もうすっかり春ですね。
春の雨、あっという間に散る桜、別れと出会い、少しずつ濃密さを増す匂い、むっとする温度。
明るいように見えて時折絶望的にもの悲しい。
春とは非常に複雑で気難しいなあと思います。

ということでこの漫画。
いやたまたまこのタイミングで読んだだけですが。
 

春の呪い: 1 (ZERO-SUMコミックス)
 

 

妹が死んだ。名前は春。まだ19才だった。 妹が己のすべてだった夏美は、春の死後、家の都合で彼女の婚約者であった柊冬吾と付き合うことになり―・・・。 妹の心を奪った男との季節が巡り始める。 新鋭が贈る話題の初連載作、待望の第1巻!!

 

 

お前は 明日にでも死ぬつもりなのではないか

お前が死ねば俺も死ぬぞ それでもいいのか


この人は元々Pixivで知った作家。
この人の「来世は他人がいい」という任侠もの?の設定を見て、
キャラクターも設定もいちいち面白くてツボだった。

 
※「来世は他人がいい」はこちら。

 
なんだろうこの引き込まれる感じ。
Pixivで予告を見た時からもう「これは…おお…」という感じで(語彙力)
絶対におもしろいだろう、というオーラがあった。

表紙デザイン、装丁もいい。
ごてごてしていないのにぐっと惹きつけられる。
少しサブカルっぽくもあり、でもとっつきやすそうな感じ。
トーリーで見せてくれそうな予感がひしひしと伝わってくる。
 
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ねっ!

絵は日本橋ヨヲコを思い出すような、少々直線的であり、時折使われる瞳に光のない描写。
これも非常に魅力的で好みだ。

亡くなった妹、春の初心さと苦しみ。
姉、夏美の空元気とその奥に隠された沼のような暗さ。
妹の元婚約者であり姉の現婚約者、冬吾の男前具合。
彼らの表情と感情の移り変わりもいい。
 
死に惹きつけられる夏美、その姉に惹かれ強い意志を持ち始める冬吾。
そこにはびこる春の呪い
1巻は悲しく切なく、時折のときめきの中に絶望があり、
2巻で波乱の末に辿り着いた二人の答えを知る。
 
個人的には1巻のどうにもならないそれぞれの葛藤のような展開が好きで、
しかも勝手にこの作者は暗くてあまり救いのない物語が好きなのかなと、
前半の空気感からもそういう話かと思っていたので、ラストの持って行き方に少し驚いた。
 
綺麗にまとまりすぎた、というレビューもあるが、
そういう人は私と同じようにどうしようもない展開が好みなんだろうと思う。
 
そういう人間からすると少し物足りない感じはするのかもしれないが、
これはこれでよかったと。なるほど、と感じた。
これがこの人の描き方なんだと。

春の呪いが本当にあるのかは分からない。
死んだ人間が生きている人間を呪うことが出来るのかは分からない。
だからこそ、生きている二人は春の呪いを想像し、作り上げ、それに思いを馳せながら生きていく。
どちらかというとそれは春への贖罪だ。
それが春の呪い
でも大切な人と一緒になると決めたから、進むしかない。
生きるとはそういうこと、という清々しさを感じさせるラストだった。

やっぱりいい。
好みと違ってもすとんと受け入れられる。それはこの漫画が魅力的だからだ。
次から作家買いだなこりゃ。
 
というか「来世は他人がいい」も漫画化、単行本化してください。
どうぞよろしくお願いします。

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