2017/01/22 娘が発達障害と診断されて…母親やめてもいいですか/山口かこ、にしかわたく
娘が発達障害と診断されて… 母親やめてもいいですか (文春文庫)
- 作者: 山口かこ,にしかわたく
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/05/10
- メディア: 文庫
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「この母親は許せない!」「すごく救われた。ありがとう!」
賛否両論を巻き起こした超ド級の子育てコミックエッセイが待望の文庫化!
母娘の近況も新たに追加収録。
高機能自閉症やアスペルガー症候群の権威・杉山登志郎先生の解説付き。
不妊治療や流産を乗り越え、ようやく授かった娘は発達障害だった。療育に奔走するが、わが子と心が通い合わない事に思い悩み、いつしか将来を悲観するようになっていく。チャット、浮気、新興宗教……現実逃避を重ねる中、夫から離婚届を突き付けられてしまう。その時、私が選んだ道とは――。著者の絶望と再生の体験記!
障害のある子どもに関わる場所で働いているのもあり、当事者家族の生の声を読んでみたい、という思いで購入。
上記にあるように、ネットのレビューでは「救われた」「楽になれた」という感想と、激しい批判が入り乱れている。
”発達障害の子供に耐えられず不倫をして母親辞めました”が正しいんじゃないか?という批判があった。確かに内容的にはそうであるので、的を射すぎており思わず膝を打った。
批判派の意見も分かる。
しかし障害児を抱えて、理想と現実のギャップに逃避したくなる気持ちも、経験したことがないが絶対にあるはずだ。
何にせよ、ひとりひとり耐久性も感受性も違う人間なのだ。
過ちを犯す者も、それを過ちと思わない者も、平気な顔をしているようで自分に枷をはめて苦しみながら生きている者もいる。
筆者が本当はどのような思いを抱えているのかは分からない。
だが、私はこのどうしようもない母親の物語を読めてよかったと思う。
私は当初、勝手にこれは前向きな漫画なのだろうと思いながら読み始めた。
しかし、途中からめちゃめちゃに正直な漫画だった。
読み終わった後、なんだか楽な気持ちになった私も自己中心的な人間なのかもしれない。
死にそうになりながら最低のことをしても逃げても後ろ指をさされても生きるしかないと、自分を何よりも大事にしたこの人を私は責められない気がする。
ただひとつ、筆者の子供が成長し、この本を読んだ時。
筆者の子供”たから”ちゃんは、発達障害こそあるものの知的障害はない。少し不器用なだけで人の気持ちも分かる。
この本に何が描かれているか、自分の母親が自分の存在をどう受け止め、考え、苦しんだかを知ってしまうかもしれない。
それだけが心配であり、想像するだけで心が痛い。